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【Google広告】コンバージョン価値に基づく入札(VBB)ってぶっちゃけどうなの?検証してみた

こんにちは。株式会社エイチームライフデザインでWEBプロモーションを担当している畠田です。
普段は、社内のWebプロモーション分野のスペシャリストとして、特に広告・分析基盤関連の新しい機能の検証や社内への普及を行っています。

ここ1年ほど、Google広告では「VBB」「価値に基づく入札」という言葉を耳にする機会が増え、関連機能のアップデートにも注力されています。

「成果が上がるなら挑戦してみたいけど、1から学習でしょ?初動のリスク高くない?」
「これまでの入札戦略と考え方が違いすぎて敷居が高い…」

今回は、実際に運用中の広告アカウントで検証して分かったVBBの挙動についてまとめました。

VBB(Value Based Bitting)とは?

直訳すると「価値に基づく入札」で、コンバージョンによってその価値が異なるビジネスの場合に、それぞれの価値に合わせた入札を行うことを指します。
例えば商品Aを2,000円、商品Bを10,000円で販売しているECサイトの場合、ユーザーがAを購入するか、Bを購入するかによって同じ1CVでも大きく価値が異なりますよね。
上記の例で1CVあたり一律1,000円の粗利を創出したい場合、Aを購入したユーザーにかけられる広告費は1,000円(CPA1,000円)、Bを購入した場合は9,000円(CPA9,000円)となり、購入商品に応じて入札強度を変える必要があります。

Google広告では下記の入札戦略があり、価値が一律ではないビジネスにおいての利用が推奨されています。

  • コンバージョン値の最大化

  • 目標広告費用対効果(tROAS)

検証①tCPAとtROASの挙動の違いって?

社内の広告アカウントのほとんどは目標コンバージョン単価(tCPA)で運用しており、目標広告費用対効果(tROAS)の利用経験がありませんでした。
そのため、tROASとtCPAの挙動の違いを事前に検証をすることにしました。

検証のフロー

  1. 既存のCVアクションに値を設定

  2. 約一か月間、値を蓄積する期間を設ける

  3. tCPA-tROAS比較のカスタムテストを作成

  4. 約一か月かけて数字の動きを観測

1. 既存のCVアクションに値を設定する

検証対象に選んだ広告アカウントは、コンバージョン値の設定がなされていなかったため、値を設定するところからスタートしました。
tCPAとtROASの入札戦略の違いによる挙動の変化を見るために、変動要素をなるべく排除する目的でコンバージョン値は一律としました。

2. 約一か月間、値を蓄積する期間を設ける

コンバージョン値データが十分に蓄積されていない状態でtROAS運用を始めると成果がぶれる可能性があるため、1の後一か月間データの蓄積期間を設けました。

3. tCPA-tROAS比較のカスタムテストを作成

Google広告のカスタムテスト機能を利用し、tROAS専用のポートフォリオを適用したテストキャンペーンを作成しました。

カスタムテストの設定は次の通りで、入札戦略以外の条件はBaseキャンペーン(tCPAキャンペーン)になるべく合わせるように設定しています。

カスタムテストのTrialキャンペーンの設定詳細

4. 約一か月かけて数字の動きを観測

初動から学習が進み安定するまでの期間を考慮して、テスト期間を一か月に設定しました。

検証①の結果

開始1時間後のIMPと広告費

入札戦略がtCPAのBaseキャンペーンに対して5倍のIMP量、2倍の広告費を消化しました。
検証用に新しくtROASのポートフォリオを作成したため想定の範囲内ではあります。

KPIの推移と傾向

開始後、数日間の学習期間がありました。学習期間中はCPAが高めに推移していたものの、終了後は設定したtROASに近いROASで推移しました。4週目以降は、CPA換算するとtCPAよりも安い状態で安定しています。

tCPAとtROASのCPA推移

CV数はtCPA比で顕著に低下しました(約35%減)。
IMPの減少による配信ボリュームの純減とCTR/CVRの低下が影響しています。

tCPAとtROASのCV数推移

IMPの減少要因の一つとして、CPCの低下が挙げられます。
tCPAとtROASは同程度になるように設定しておりましたが、実際はCPCが20%ほど減少しており、入札強度が下がってしまっています。

tCPAとtROASのCPC推移

マッチタイプ別に見ると、IMPは部分一致KWDでの低下幅が大きかったです。
完全一致KWDではむしろ増加する動きが見られましたが、週を追うごとに低下し、最終的にはtCPAキャンペーンの方が高くなっています。

完全一致と部分一致のIMP変化率の推移(tROAS/tCPA)

部分一致KWDはIMPやCPCの低下が見られるものの、CTR/CVRの変動幅が完全一致KWD比で小さい傾向にありました。グラフはCTR変化率の推移となります。CVRについても同様の傾向がありました。

完全一致と部分一致のCTR変化率の推移(tROAS/tCPA)

また、tROASキャンペーンの部分一致KWDのクエリ拡張性は、週を追うごとに低下しています。
これまでの結果から総合すると、CPCの低下により、tROASキャンペーンではより確度が高いであろうユーザーに絞った配信が行われている印象です。
マッチタイプの性質上、拡張性の高い部分一致ではその傾向が顕著に現れました。

部分一致のクエリ数推移

検証①で分かったこと

  • 学習データを蓄積させるため配信初日はコストが跳ねる可能性あり

  • 目標値が同じでもtROASキャンペーンの方がCPCが安くなり、入札が弱まる傾向。結果IMPが純減し、tCPA比でボリュームが出しにくい

  • ボリューム面では、特に部分一致KWDで顕著な傾向が出る

検証②tROASを変更した場合、どのような挙動になる?

検証①の結果、tCPA比でボリュームが出しにくいということが分かりました。
そこで、tROASを下げた場合この課題を解消できるのか、KPIの動きはどうなるのかを追加検証しました。

テスト条件

  • 検証①のカスタムテストをそのまま利用(tCPA vs tROAS)

  • テスト期間は約半月

  • tROASを下げる

KPIの推移と傾向

ROASは変更したtROAS通りに動きました。tROASに対して実績のROASの調整能力が高い点は検証①の結果と共通しています。

tCPAとtROASのCV数推移

ROASが下がった理由は、tROAS変更によってCPCが上昇し、それに伴ってIMPも上昇したからで、こちらの意図通り「しっかり調整をしてくれた」印象を受けました。
tROASを変更後、IMPボリュームの担保ができるようになった一方で、CV数は伸びませんでした。検証①からCV減少幅が数%回復した程度です。検証①時と比較して、CTR/CVRが下がったことが影響しています。

tCPAとtROASのIMP/CTR推移
tCPAとtROASのCV数推移

また、部分一致KWDのクエリ数は、対tCPAキャンペーンで僅差にまで迫りました。完全一致KWDはtROASの変化に対して大きな変動は見られませんでした。

部分一致のクエリ数推移

検証②で分かったこと

  • 設定したtROASに対する調整精度は高く、目標値を変えることで入札の強化が可能

  • IMPは意図通り拡張されるものの、CTR/CVRが低下。確度の低いユーザーにもターゲットして配信されるようになるため、CV数の増加には期待できない

検証③部分一致KWDを増やすとどうなる?

マッチタイプ別に見た場合、部分一致KWDの方が調整が効きやすいことを考慮し、部分一致KWDを追加することでIMPだけでなくCV増につながるのではないかと考え、検証を行いました。

テスト条件

  • 検証①②のカスタムテストをそのまま利用(tCPA vs tROAS)

  • 検証を2ステップに分ける

    • 検証③-1:tROASキャンペーンのみに部分一致KWDを追加

    • 検証③-2:tCPAキャンペーンにも同じ部分一致KWDを追加

  • テスト期間は次の通り

    • 検証③-1:約半月

    • 検証③-2:約1か月

  • KWD追加以外の条件変更はなし

KPIの推移と傾向

検証③-1では、tROASキャンペーンのみに部分一致KWDを追加することで、IMPが大幅に増加しました。
CTR/CVRは引き続き低いものの、IMPの上昇幅が大きかったこと、検証②比でCVRが上がったことの2点が影響し、CV数はtCPAキャンペーンを上回りました。

検証③-2の結果、tCPAキャンペーンでも部分一致KWD追加によるIMP上昇が見られました。ただし、上昇幅はtROASキャンペーンの方が大きく、実際のIMP量もtROASキャンペーンが勝ります。
IMP影響でCV数は微減までもっていくことができましたが、CTR/CVRはtCPAキャンペーンに分があるため、CPA換算をすると引き続きtCPAの方が良くなっています。

検証③で分かったこと

  • 部分一致KWDの拡張性はtROASキャンペーンの方が高く、IMPを増やしやすい

  • CTR/CVRはtROASキャンペーンが低く、ユーザー確度をあまり考慮せず出稿が拡大する傾向あり

    • 検証②の段階でtROASを上げたため、設定値の問題もありそう

まとめ

tCPA時代の設定のままでtROASへ移行すると、全体的にIMP/CVボリュームの低下につながる傾向となりました。
tROASは、投資対効果を上げることが目的の入札戦略なので、1件1件の質を最重要視した結果、拡大に対して慎重な動きになるのでは、と考えています。

ボリューム不足を補うために、今回試したようなtROASの初期設定値を下げる、部分一致KWDを追加するなどは一定の効果が見込めると考えられます。
ただし、許容されるROASに余裕がある状況下では、CVがほとんど見込めないターゲットにまで拡大してしまう傾向があるので、設定するtROASは慎重に考える必要がありそうです。

VBBについては、成功事例がまだまだ少ない中で、チャレンジできずに踏み留まっている…という方も多いのではないでしょうか。
今回の内容が、広告運用を行うみなさまのトライの後押しになれば大変嬉しく思います。

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