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涙なしで語ることができるよやきゅん♡誕生の裏側 ~比古志どこ行ったんや~

みなさま、こんにちは。大広WEDOという広告会社から、エイチームライフデザインに今年の10月からやってまいりました、西田良平と申します。
大広にいたときから、クリエイティブディレクターとして引越し侍のTVCM等を企画、ディレクションさせていただいておりました。もう10年以上になるでしょうか。そんなお仕事の中で、よやきゅん♡というアイドルは生まれました。見たことねえよという方がおられたら切ないですが、まずはこちらのTVCMをご覧ください。どうぞ。

ありがとうございました。これが、よやきゅん♡です。
そのよやきゅん♡がどのように生まれたのか、お話をさせていただきたいと思います。ただ、2016年とかの話ですし、わたくし歳も44歳なので、記憶はおぼろげです。お許しください。


主人公は、比古志(ひこし)と名乗るムード歌謡歌手だった

だれやねん。そう思う方々も多いことでしょう。しかしこの比古志こそ、よやきゅん♡を語るうえで、なくてはならない存在であることは、ぜひとも知っておいていただきたい事実です。
そう、もともとこの企画の出発点は、ムード歌謡歌手「比古志」がドサ回りをして、引越し侍の歌を全国各地のスナックなどで歌うという物語でした。
(常連客から「帰れ」「出ていけ」などと言われながら歌う悲しいお話)

歌う比古志とその妻(西田の筆圧高めの企画コンテより)

そもそも「比古志」という名前は、お察しの通り「引越し」という言葉から名付けられました。名付けられたっていうか、僕が勝手に名付けたんですが。そんな比古志がドサ回りの旅の途中で出会うのが、HIKAKUというビジュアル系バンドのボーカル、そして、そうアイドルの「よやきゅん♡」なのでした。
「HIKAKU」は「比較」、「よやきゅん♡」は「予約」。引越し侍が「引越し比較・予約サイト」であることをさりげなく伝えるために、それぞれ名付けられたのです。名付けられたっていうか、まぁいいや。
とにかく、「よやきゅん♡」が「予約」だということを、まずは覚えておいてください。

なぜ今のCMの形になったのか ~ドサ回りの中止、そしてブラッシュアップの彼方へ~

ということで、比古志のドサ回り企画としてプレゼンをし(もちろん他の案もどっさりと)、見事採用となったのですが、その後のお話の中で、ブラッシュアップが必要となったわけです。
そのブラッシュアップ内容とは…こちら

  • 比古志が歌おうとしていた「♪The moonligt The moonligt 引越しThe moonligt~」という歌は、耳からサービス名を刷り込めるから、その考え方はベースとしよう。

  • さらに純粋想起をあげるために「引越しするなら引越し侍」という歌詞にしよう。(別にThe moonligtである必要もない)

  • 比古志だけだとパワーが弱い。「引越し」だけでなく、「比較」「予約」も印象付けるために、「比古志」「HIKAKU」「よやきゅん♡」それぞれのクリエイティブを作って3部作として発信しよう。それでこそ「引越し」「比較」「予約」サイトというものが完成されるのだ。

  • ただ、名前がそれらにかかっているだけでは伝わらない。業態が伝わるものにしよう。

  • 「お得に引越しできる」というベネフィットも伝えよう。

うん、すべて大事。なんとかしよう。ちゃんと整理しよう。
…どうしよう。
ということで、当時のチームで頭を抱えながら考えました。

皆が勘違いしてそうなことをあえてコピーにしたことで見えた光 

何に一番頭を抱えていたかと言うと、そう、「業態が伝わるものにしよう」と「お得に引越しできるというベネフィットも伝えよう」このふたつ。
「♪引越しするなら引越し侍」と歌って、そして業態とベネフィットを伝える…。えっと…えっと…。

そこで出たのが「引越しするなら引越し侍って、聞いている人は引越し業者のCMだと思うよね」ってことでした。
ほんとだ…。自分たちは引越し侍がサイトであることは知っているけど、知らない人からすると、確かに引越し業者だと思うだろうな。

まさにそれを逆手にとり、コピーにし、そしてそのコピーを中心に構成を組み立てたのです。

「♪引越しするなら引越し侍」と歌っていて、
「お得に引越しするなら引越し侍」というタグラインとロゴが出ていて
それなのにも関わらず
「引越し侍は、引越し業者ではありません。」と言って
「なぜなら」
で終わる。

なんということでしょう。思わず「え!?ちがうの!?あんなにも引越しするなら引越し侍って繰り返し歌ってるのに!?お得に引越しするならって言ってるのに!?ちょっと待ってよ!じゃあなんなのよ!なぜならなんなのよ!」となります。そうなると人は何をするか。そう「調べる」のです。
そしてそこではじめて引越し侍が「引越し比較・予約サイト」であることを知るわけです。

お気づきだろうか。
いつの間にか、「指名検索」をしていることを。

実はそれが、純粋想起ともうひとつの狙いでもあったのです。
このCMにおいて「指名検索」をするということは、もうサービス名を覚えている。そして業態を知ろうとしてくれている。そして引越し比較・予約サイトであることを知ってもらえる。だから「引越しするなら引越し侍」なんだという理解してもらえる。純粋想起の完成です。おめでとうございます。

そしてはじまる、楽曲制作と撮影と3つの出会い

企画は決まりました。さて、ここからが本番です。
このCMの要はやっぱり楽曲。ここが中途半端では誰も聞く耳なんて持ってくれないし、サービス名も覚えてくれないし、何の話題にもなりません。
余談ですが、人間の集中力が続く時間って、金魚より短いらしいですね。
さっそく話を戻します。
そこでまず、ムード歌謡、ビジュアル系ロック、アイドルソング、このまったくバラッバラのジャンルをとにかく聴き漁り、それぞれのクセやあるあるみたいなものを研究しまくりました。「この感じわかるわ~こういうのこのジャンルによくあるわ~」と思って何度も聞きたくなる歌を作るべく。

企業発信のnoteって、あんまり人の名前を出さないほうがいいような気もするし、別にしてもいい気もするし、どっちかわからないので出しませんが、
名古屋に曲作りの天才がおられまして、その方に曲のイメージを共有し、西田がスマホに録音した鼻歌をお聞かせし、耳を腐らせ、腐らせたらあかん、そしてみっちり話し、まったくジャンルの違う3曲を作っていただきました。

最高の曲は用意した。さて、お次はその曲を歌う「アーティスト」です。
僕はプロデューサーたちとともに「比古志」「HIKAKU」「よやきゅん♡」を探す旅に出ることにし、全国各地を巡りました。

下から比古志、HIKAKU、よやきゅん♡(引用元リンク

比古志は、横浜のはずれのスナックにいました。

知らない土地にポツンと佇むそのスナックの扉を開くと、ステージで歌う比古志の姿が。
ミラーボールに照らされ、歌う比古志。嗚呼…歌が染みる…そして長い…。
ようやく歌い終わり、握手を求める比古志。そしてその店のママから差し出される、ビールと、おミカン。僕はおミカンをビールで流し込むという初めての体験をしました。素敵だ…これが比古志の世界観…。
比古志は快く引越し侍の歌を歌ってくれると約束してくれました。

HIKAKUは、名古屋のプロダクションさんの会議室に降臨しました。

その会議室の扉を開くと、漆黒の透けたお召し物を着て背中と頭部から羽根の生えたHIKAKUの姿が。
会議室の蛍光灯に照らされていたとばかり思っていましたが、それはきっと後光が差していたんだと、今になって気づかされます。
HIKAKUは、下々の分際のわたくしに歌ってしんぜようと約束してくれました。

よやきゅん♡は、都内某所に現れました。

その某所で待っていると、某扉が開き、某アイドルが入ってきたわけですが、その某アイドルこそが、某よやきゅん♡だったのです。
我々は、その可憐さに思わず無言で立ち止まってしまうほどでした。
アイドルとは、こんなにも吸い込まれるような魅力を放つのか…。
そんなよやきゅん♡は、歌ってもいいんだお♡と某西田に約束してくれました。

そして撮影当日。

昭和の歌番組さながらの舞台で歌う比古志。
あのビジュアル系バンドのMVに出てきそうなグレーの箱の中で歌うHIKAKU。
ピンクのダンボールが吊るしてあるかわいいステージで歌うよやきゅん♡

目まぐるしく移り変わる、ジャンルの数々。

それぞれスタジオだけでなく、夜の街や教会や学校にまで出てMVも撮りました。

これは…本当に広告を作っているのか…それともエンターテインメントを作っているのか…。いや、その両方を兼ね備えたものになっているのだ。そう感じながら完成したわけです。

その後、韓国アイドルグループの「KUCHIKOMI(口コミ」、レゲエグループ「覧王(ランキング)」という仲間も増え、より一層引越し侍のベネフィットを伝える幅が広がっていき、

そしてなんと、二代目よやきゅん♡も登場。
初代の完全再現を実現したことで、多くの注目が集まり、ありがたいことに話題となりました。

そう、「よやきゅん♡」だけが唯一残ったわけです。人気があるがゆえに。
みなさん、思い出してみてください。よやきゅん♡は「予約」です。
「予約」が残ったというとても不思議な現象を、ぜひお楽しみいただけたらと思います。

さいごに、せーの…

比古志どこ行ったんや


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